【A】可能である。ただし、以下の2点を満たす必要がある。
保険薬局の無菌製剤処理加算に関する施設基準
(1) 2名以上の保険薬剤師(常勤の保険薬剤師は1名以上)がいること。
(2) 無菌製剤処理を行うための無菌室、クリーンベンチ又は安全キャビネットを備えていること。
(平成28年3月4日 保医発0304第2号 別添1)
調剤室のクリーンベンチを設置することに対して日本薬剤師会から以下の文書が発表されている。
■調剤室にクリーンベンチ(クラス 100)を設置して無菌製剤の調製を行う場合
「b. 清潔な部屋にクリーンベンチを設置」して、そこで無菌製剤を調製しようとする場合と、「c. 調剤室にクリーンベンチを設置」して、そこで無菌製剤を調製しようとする場合の大きな違いは、クリーンベンチの外の環境にある。
例えば、通常のオフィスの環境では、クラス 1,000,000 以上の値、海上や森林でクラス 10,000~100,000 といわれている。
薬局の調剤室は、①外気の流入がある可能性が高い、②散剤調剤等も行われるため粉塵が発生しやすい、③人員が調剤室の内外を行き来する場合等があり、一定の環境を保ちにくい、といった環境下にあり、環境により大きく異なるが、通常のオフィスと同等かそれ以下の清浄度と考えられる。
そのため、クリーンベンチ内の清浄度をどれだけ高めても、クリーンベンチ内に調製のために持ち込む薬液や器具(その外装も含む)の汚染が、看過できない状況になる可能性がある。
また、先にも述べたように、薬局では無菌製剤を調製してから、実際に患者が使用するまでの期間が長い可能性が高い(数日分を一度に作る等)。
これらのことから、本会としては、前記の「③TPN基本液とその他注射剤の混合」に類する無菌製剤の調製を薬局で行う場合には、「b. 清潔な部屋にクリーンベンチを設置」した場所(区画)、または、それよりも良好な環境で実施することが望ましいと考える。
しかし、場所的な制約等により、調剤室内にクリーンベンチを設置し、無菌製剤の調製を行わなければならない場合には、①散剤台に隣接するところには置かない、②散剤の調製中は無菌製剤の調製を行わない、③クリーンベンチの周囲をビニールカーテン等で天井から床まで囲う(簡易的ではあるが、クリーンベンチ周辺の空間を囲うことで、一定の清潔な空間を作成する)、等の措置が必要と考えられる。
なお、クリーンベンチ内の清浄度は、クリーンベンチ外の清浄度に影響を受けるため、調剤室にクリーンベンチを設置した場合は、無菌室や清浄な部屋に設置した場合に比べ、例えば、使用前のウォーミングアップの時間を長くする、未使用時の汚染を減少させるため電源を常に ON にしておく等、清浄度の保全により留意すべきと考える。
また、いわゆる簡易型(卓上型と称される場合もある)のクリーンベンチの中には、HEPA フィルター通過直後の空気の清浄度クラスは高いものの、外気流入等により、そのブース内の清浄度クラスが保てるかについて、疑問があるものもあることから、クリーンベンチ等を導入する際には、十分な検討を行なって頂きたい。
加えて、無菌製剤の調製では、汚染されたクリーンベンチを使用しても意味が無いため、定期的な清掃や、可能であればパーティクルカウンター等によるクリーンベンチ内の環境測定を行うことが望ましい。
なお、ここに示した内容は、無菌製剤を調製するための設備に関する部分だけであり、製剤の細菌汚染等を防ぐためには、設備の要件も重要だが、手技的要件(どれだけ無菌操作が出来るか)も、大きなファクターであることを十分に認識していただきたい。