【薬剤師国家試験 実務 第102回 問290-291】

問290-291
62歳男性。1ヶ月ほど前から息切れ、呼吸困難などの心不全症状が出現し、アルコール性心筋症との診断を受け、以下の処方により加療中である。薬剤師が現在の症状を確認すると「最近は呼吸が苦しくなることが多く、家の中で座っていれば問題ないが、少し散歩するだけでも息切れがする」との訴えがあった。

既往歴:高血圧 飲酒歴:心不全症状が出現するまで20年間の大量の飲酒歴があり、禁酒を指導されたが、現在機会飲酒。

検査データ:左室駆出率23%、下肢浮腫(+)、 Na 140mEq/L、K 3.6mEq/L、Cl105mEq/L、SCr 1.0mg/dL、 血圧123/72mmHg、心拍数62bpm(洞調律)

(処方)

1) エナラプリルマレイン酸塩錠10mg 1回1錠(1日1錠)

スピロノラクトン錠25mg 1回1錠(1日1錠)

1日1回  朝食後14日分

2) カルベジロール錠2.5mg 1回1錠(1日2錠)

1日2回  朝夕食後14日分

3) フロセミド錠40mg 1回1錠(1日2錠)

1日2回   朝昼食後14日分

 

 

問290(病態・薬物治療) この患者の病態に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 適切な治療を施しても生存率が低く予後不良である。

2. NYHA 機能分類度(中等度~重症)の心不全症状を呈している。

3. 肥大型心筋症の病態を呈している。

4. カリウムの摂取制限が推奨される。

5. 治療の基本に断酒がある。

 

 

問291(実務) 薬剤師は、現在の病態から、患者の薬物療法に関するアセスメントを行い、今後のプランを考えた。追加を推奨する薬剤として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1. アロプリノール

2. エポエチンアルファ

3. アテノロール

4. カンデサルタンシレキセチル

5. ジゴキシン

 

 

 

 

 

 

 

 

(回答)
左室駆出率(LVEF)が50~55%未満のときには左室収縮機能不全状態と推定されることが多い。当患者は左室駆出率23%と低値である。さらに下肢浮腫(+)であり、心不全疑いと考えられる。
問290
回答は 2と5である。

1. 適切な治療を施しても生存率が低く予後不良である。→これだけでは予後不良かどうかは断定できない。アルコール性心筋症と考えられる。
2. NYHA(New York Heart Association)分類は以下の4段階に分かれる。

Ⅰ度:心疾患はあるが身体活動に制限はない。
日常的な身体活動では著しい疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じない。
Ⅱ度:軽度の身体活動の制限がある。安静時には無症状。
日常的な身体活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。
Ⅲ度:高度な身体活動の制限がある。安静時には無症状。
日常的な身体活動以下の労作で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。
Ⅳ度:心疾患のためいかなる身体活動も制限される。心不全症状や狭心痛が安静時にも存在する。わずかな労作でこれらの症状は増悪する。

「最近は呼吸が苦しくなることが多く、家の中で座っていれば問題ないが、少し散歩するだけでも息切れがする」と記載があり、Ⅱ度かⅢ度か少し迷うが、ここではⅢ度 (中等度~重症)であろう。

3. アルコール性心筋症は拡張型心筋症様である。
4. カリウムはK 3.6mEq/Lと正常範囲内 (3.5〜5.0mEq/L)である。
5. もちろん正解である

 

 

問291(実務)

回答は5である

心不全治療には、降圧薬 (ARBやACE阻害薬)、β遮断薬、利尿剤、ジゴキシンなどが使用される。
1. アロプリノール →高尿酸血漿治療剤

2. エポエチンアルファ→腎性貧血に使用される注射剤

3 . アテノロール→すでにβ遮断薬であるカルベジロールが投与されている。また、アテノロールは水溶性β遮断薬であり、心不全に対する効果は低いと考えられる。

4 . カンデサルタンシレキセチル→すでにACEが投与されている。ACEとARBは基本的に併用しない。ACEは空咳に注意だが、臨床においてはあまり見られていない印象がある。

5. ジゴキシンが正解。臨床現場ではよく使用されているが、ここ最近では使用が見直されるケースもある。