問198−199
52歳女性。若い頃からビール(350mL)を毎日6缶飲んでいた。腹部膨満感、嘔吐、四肢の浮腫を訴えて受診したところ、アルコール過剰摂取による肝硬変と診断された。受診時の検査データを以下に示す。
検査値 Na138mEq/L、Cl99mEq/L、K3.9mEq/L、T-Bil10mg/dL、Alb2.5g/dL、 AST120U/L、ALT99U/L、BUN15mg/dL、血清クレアチニン1.1mg/dL、腹水(+)
患者は断酒とナトリウム摂取制限、スピロノラクトンによる薬物治療を始めた。後日の血液検査では血清カリウム値が5.0mEq/Lに上昇していた。
問198(実務)
血清カリウム値が上昇した理由として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
- 病態の進行
- 嘔吐
- 断酒
- ナトリウムの摂取制限
- スピロノラクトンの投与
問199(物理・化学・生物)
薬剤師は前問で考慮した理由以外に、今回用いた血清カリウム値の測定法(ピルビン酸キナーゼを用いる酵素法)におけるナトリウムの影響も疑った。そこで、他の測定法についても検討した。血清サンプル中のカリウム値の他の測定法として適しているのはどれか。2つ選べ。
- EDTAを用いるキレート滴定法
- イオン選択電極法
- フレーム(炎光)分析法
- ELISA法
- ヨウ素を用いる酸化還元滴定法
(引用 厚生労働省 第104回薬剤師国家試験問題及び解答(平成31年2月23日、2月24日実施)https://www.mhlw.go.jp/content/000491254.pdf)
問198
⑤
スピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)は、遠位尿細管のアルドステロン受容体で競合的拮抗をおこし、Na⁺-K⁺交換系を抑制する利尿薬です。よって、Na⁺,H₂Oの再吸収を抑制し、K⁺排泄を抑制します。
問199
- × EDTAを用いるキレート滴定法は、2~4価の金属を滴定する方法なので、血清サンプル中のカリウム値の滴定法としては不適です。
- 〇 イオン選択電極法は、指示電極によるイオン電位と参照電位の電位を測定し、それらの電位差から試料中のイオン濃度を求める方法です。
- 〇 フレーム(炎光)分析法は、霧状にした溶液を炎の中に入れ、発光した光を分光することによって目的元素特有の光度を測定することにより元素を定量する方法です。
- × ELISA法は、抗原または抗体を酵素で標識し、酵素活性を指標として抗原抗体複合体の量を測定する方法です。
- × ヨウ素を用いる酸化還元滴定法は、酸化性又は還元性の強い物質の溶液を標準液として用い、酸化還元反応を行う方法です。
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