問246−247
42歳女性。5年前に出産後、しばしば複視が出現した。他の症状は認められなかったが、2年経過後、眼瞼下垂、四肢の疲労感が出現し始めた。半年前からは、夕方になると増悪し、台所仕事ができない、しゃべりにくいなどの症状が出現したため、近医を受診した。血液検査で抗アセチルコリン受容体抗体の値が23nmol/L(正常値0.0 – 0.2nmol/L)であり、重症筋無力症と診断され、治療開始となった。
(処方)
ピリドスチグミン臭化物錠60mg 1回1錠(1日2錠)
1日2回 朝夕食後 3日分
ピリドスチグミン臭化物錠60mgの内服を開始後、3日目の早朝から体調不良を訴え、救急外来を受診した。医師は投与量の妥当性を確認するために、注射剤としてエドロホニウム塩化物2mgを投与したところ、発汗、腹痛などの症状が増悪した。
問246(実務)
発汗、腹痛などの症状の改善及び今後の治療継続に必要なのはどれか。2つ選べ。
- エドロホニウム塩化物注射液の追加投与
- ピリドスチグミン臭化物錠の減量
- ネオスチグミンメチル硫酸塩注射液の追加投与
- ピリドスチグミン臭化物錠の増量
- アトロピン硫酸塩注射液の追加投与
(引用 厚生労働省 第104回薬剤師国家試験問題及び解答(平成31年2月23日、2月24日実施)https://www.mhlw.go.jp/content/000491254.pdf)
問246
1.× 重要筋無力症とは、抗アセチルコリン抗体によりアセチルコリン受容体が減少する疾患です。複視、眼瞼下垂が主症状で、コリンエステラーゼ阻害薬で治療を行います。重症筋無力症は急激に全身筋肉が麻痺し呼吸麻痺に至ることがあります。(これをクリーゼといいます。)これは、コリンエステラーゼ阻害薬の過剰投与または投与量不足によって起こります。本患者さんはエドロホニウム(商品名:テンシロン)投与で悪化しているので過剰投与によるものであると考えられます。よってエドロホニウム塩化物注射液の追加投与は不適であると考えられます。
2.〇 ピリドスチグミン臭化物錠(商品名:メスチノン)は原因薬物であると考えられるので減量することは適切であると考えられます。
3.× ネオスチグミンメチル硫酸塩注射液もエドロホニウム(商品名:テンシロン)やピリドスチグミン臭化物錠(商品名:メスチノン)と同様の作用機序をもつコリンエステラーゼ阻害薬なので追加投与は不適であると考えられます。
4.×
5.〇 発汗や腹痛はコリンエステラーゼ阻害によるM₃受容体刺激によっておこっていると考えられるので抗コリン薬を投与するのは適していると考えられます。
問247(薬理)
前問で選択した治療処置により、患者の症状は緩和された。この症状が緩和される機序はどれか。2つ選べ。
- アセチルコリンの濃度の上昇
- アセチルコリンの濃度の低下
- ムスカリン性アセチルコリン受容体における競合的拮抗
- ニコチン性アセチルコリン受容体の脱感作
- アセチルコリンエステラーゼの阻害
問247
1.× コリンエステラーゼ阻害薬を減量することでアセチルコリンの分解量が増えるため、アセチルコリン濃度は低下します。
2.〇
3.〇 抗コリン薬の作用機序です。
4.×
5.×
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